人は生活のあらゆる場面で、手指を使います。
特に手のほうの「指」にはそれぞれ由来を持った名前が付いています。それはその大きさや用途が所以であると言われますが、誰が決めたのか、左手で言えば左から親指・人差し指・中指・薬指・小指と並び、親指は他の指より太いことから「親」と称されています。
人差し指は人をゆびさす時に使う指だから「人差し」指と呼ばれます。
中指は見たまま手の真ん中に位置する指だから「中」指とされます。
薬指は昔、薬を水に溶かすときや混ぜるとき、塗るときにこの指をよく使ったことから「薬」指となったそうで、小指は他のどの指よりも細くて小さい指なので「小」指とされたそうです。
ちなみに薬指については別の説として、薬師如来が右手の第四指を少し曲げ倒していることからついた名前だという話もあるそうです。(薬師如来像は製作された時代やものによってはそうなっていなかったり、左手の薬壺すら持っていないものもあります)
また余談として、手の指は家族にも例えられ、親指はお父さん指・人差し指はお母さん指・中指はお兄さん指・薬指はお姉さん指・小指は赤ちゃん指とも呼ばれます。
さて「親指」ですが、この名前にはもう一つ考えられる説があります。
なぜこの指だけは、他の指より太いからという理由だけで名前に「親」と付くのか。それは、この指だけが他四本の指のほうを向いているからです。
親はいつでも家族のことを見ている、その様子を親指の姿に重ねているのです。
各指それぞれの位置をどうずらしてみても、親指だけは必ず人差し指から小指までの四本の指のほうに顔(指の腹)を向け相対し続けているのです。
昔から「親」という存在がどういうものだったのか、ということがわかるでしょう。自分の手を見ながら考えてみてください。
そしてさらに言えば、これら五本の指はどれを欠いても、握り込んだときに力が入らないしバランスを保てない、手が持つ本来の機能を発揮できなくなるのです。それこそまさに「家族の様子」そのものではないでしょうか。
常には気にも留めない指の名前に、こうして深い意味を込めたことが事実だとしたら、それは何故なのでしょうか。
家族のみならず、人間同士の関わり合い自体が希薄になりがちな昨今です。このような身近な事柄にこそ何か教訓が見つかるかもしれません。