※以下の記事は普伝院及び末山寺院檀徒向けのものとなっております。
ご覧いただいている方のお住まいの地区の地域性やそれぞれの宗派によっては、多少違ったものになることがあります。
ここの内容を鵜吞みにせず、是非ともご自身の菩提寺様にご確認ください。
・霊供膳(れいくぜん)
またの名を「御仏膳・ごぶつぜん」とも言いますが、混乱を避けるためここでは呼び名を「霊供膳・れいくぜん」に統一いたします。
普段は略式のお膳でも良いですが、正月やお盆、故人の命日など特別な日には、ぜひ本式の霊供膳で仏様をおもてなしいたしましょう。
ご飯は、以下の写真①のようになるべく丸く詰めて盛ってください。
おかずは精進料理にするのが基本ですが、祖霊を想ってご用意されるお料理やお供物は自由にしていただいて構いませんので、それらは副菜として別皿で上げていただくと良いと思います。
箸はご飯に立ててもお膳に寝かし置いても、どちらでも大丈夫です。
料理や食材の種類については写真を参考にしていただければ幸いですが、肉や魚でなければこれ以外に何をお供えしても構いません。
法事の日に合わせて特別に作っていただくのはもちろん有り難いことですが、どうしてもご都合がつかない時もあるでしょう。
そんな時は、作り置きのおかずや残り物で代用していただいても結構です。
組み終えたら最後は写真②→③のように、全体を仏壇奥の方へ向けて「仏様へ差し出すように」据えてください。
ご法事等が済みましたら、任意のタイミングで下げてください。
そして下げた霊供膳の料理は、ご家族で召し上がっていただくのが一番です。
食べられなくなってしまった場合は、お庭の木の根元や畑、植栽のそば等に埋めて土に還してください。
自然へ還す、これも「施し」という行のひとつです。
それらがどれも不可能(庭が無い等)な場合は、誠に残念ですがゴミに出して処分してください。
梅雨時や夏場は傷みが早いですし虫もたかりやすいので、管理にお気をつけください。
以下の小さな写真(タップで拡大します)は①から順番にご覧ください。
ここでは、ごく一般的な九重椀(ここのえわん)セットによる「一汁二菜」の組み方を基準にしてご案内しています。
なお、宗派によって多少組み方に違いがあるようです。
①の写真を基準として、向かって左奥に主菜の平椀(煮物等)、右奥に副菜の壺椀(煮豆や和え物等)、真ん中に高坏の香の物(漬物等)、そして手前の左側に親椀(大盛りのごはん)、右側に汁椀(味噌汁やお吸い物等)が配置されます。
・仏壇(ぶつだん)
https://www.sotozen-net.or.jp/ceremony/memorial/obutsudan
上のリンク先は曹洞宗の公式ページです。ご参考にどうぞ。
ご自宅の仏壇には、最上段中央の本尊仏(お釈迦様)の左右に両祖師(道元様と瑩山様)が祀られていないかもしれません。
それどころか本尊仏すら無い状態で、昔から家族のお位牌1本が祀られているだけのお宅もあることでしょう。
なるべくでしたら曹洞宗の教義に則って、一仏両祖(お釈迦様・道元様・瑩山様)は揃えていただきたいところですが、仏壇内のスペースや構造により設置できるかどうかの事情は様々ですので、不明な点は和尚にお尋ねください。
仏壇とは、貴家の菩提寺をミニサイズに凝縮させたものだと思ってください。
お寺参りに足繁く通えない時に、身近な場所にその代わりとなるものをどうにか用意したい、我が家にもご本尊様やご先祖様をお招きして常に側でお祀りしたい、と考えて作られた仏具です。
家のルーツを納めるところでもあり、日々の安寧と戒めを頂く修行の場でもある仏壇は、やはりいつも磨かれていなければいけません。
なのでここでは、他所ではあまり聞かないであろう「お掃除やメンテナンス」の事に特筆してご紹介いたします。
あくまでも常の管理が大事です。定期的にお掃除をしましょう。
ほこり、落ち葉、お線香のかけら等を片付けながらも、自らの身心を清め整えているという意識をお持ちください。
また、火を扱う場所なので、こうして綺麗な状態を保つことが即ち防火対策の一環にもなります。
ご法事の前は特に念入りな清掃をしましょう。
本体の木部は固絞りの水拭きでOKですが、気を付けていただきたいのが「塗りや金色の部分はなるべく擦らない」ということです。
気になって手入れし過ぎてしまうと、塗装面を著しく傷めます。(以下、お位牌も同じ要領です)
ダスキンモップなどオイルの添加されたクロスは金箔を剝がしやすいので使用をお控えください。
なのでデリケートな箇所には、柔らかい小筆や刷毛等で汚れを払い落としながら掃除機で吸う、といったような丁寧な作業をお勧めいたします。時間は相応にかかりますがこれがベストです。
他方、こぼれて固まったロウを(少量であれば)取り除くときにこういったクロスはとても重宝します。
やさしく撫でるように拭いていると、少しずつ溶けて無くなっていきます。
道具は使いどころと扱い方次第ですので、いろいろと工夫してやってみましょう。
細かい部品、紙製のもの、古くてボロボロとするものは、無理に掃除はしないでください。
金物の仏具が経年でくすんでくるのは仕方がありませんが、銅や真ちゅう製でしたら金属磨きを使えば多少は元の輝きを戻せます。
磨き粉でやさしく磨くと黒い削れカスが出ますので、きれいな柔らかいクロスで全て拭き取りつつ丁寧に磨いてください。
この「拭き取り」の工程が不十分ですと磨き粉が表面や凹みに残ってしまい、いずれ固まって美観を損ねてしまいます。
ただし、最近の仏具によくあるメッキその他の「特殊な表面処理」を施されているものは、削れによる色落ちや化学反応による変色の可能性もありますので、金属磨きを使わないのが無難です。
ホコリを払って軽く拭く程度の清掃にとどめましょう。
塗装面であれば尚のこと要注意です。
それが磨いても良い素材なのかそうでないのか、判断に迷うときは作業を止めてください。
ぼんぼりの明かりが点かない原因はさまざまですが、よくあるのが「電球ソケットの緩み」です。
未だ昔ながらの豆球(白熱球)が入っている場合が多いので、点灯中は熱膨張⇔消灯で冷えて収縮、これを繰り返して使用期間が長くなれば自ずと緩んできます。
下端を持ちながら丸い胴体を上へずらせば、簡単に中を点検できます。
もし切れているのなら、この際LED球に交換するのも良いでしょう。
その他、配線がどこかで断線していたり、ぼんぼりそのものが壊れている可能性もありますので、根本的な修理やユニットまるごとの交換が必要な場合もあります。
明かりの電源プラグをコンセントに挿しっぱなし、お経の都度に抜き差しする、あまり挿さない等、使い方はお宅によって様々だと思いますが、特に挿しっぱなしのお宅はトラッキング現象による出火にご注意ください。
電源プラグをコンセントに挿すときは根元まで、抜くときはプラグの頭を持って、これらを必ずお守りください。
そして埃が溜まらないように周辺のこまめな清掃をお願いいたします。
幕や敷物など、金糸が織り込まれた布の荘厳具が掛かっている仏壇もあります。これらは旧式のものによく見受けられるお飾りです。
紫外線による変色や経年での劣化は仕方がないとして、汚れの除去はホコリを払うか掃除機で吸うかで対応してください。
絹製品であることが多いですから、水洗いは絶対に厳禁です。
あとよくある話として、掃除を終えたらどこに何を置いていたか忘れてしまって元通りの戻し方がわからなくなってしまう、ということがあります。
先にスマホ等で写真を撮ってから作業に入ると、仏具を気兼ねなく外せますし、戻す時もそれを確認すればいいので安心ですね。
仏具は華奢なものや重いもの、または鋭利な部材でできたものがいくつかありますので、誤って壊さぬよう、そしてお怪我をせぬよう、落ち着いてゆっくり作業をなさってください。
添付の写真は組み方の参考例です。
・その他の準備
ご法事などの前には、上記の他、各所の清掃を基本として「水向け、ロウソク、線香、生花、香炉」もチェックしてください。
水向け
上に写真を載せましたので、参考にしてご用意ください。南天の葉を使うことが多いですが、無ければ生花の葉などで代用してください。
湯飲み茶碗ほどのサイズでご用意いただければ十分です。水をこぼしても、小さなお盆へ載せてあれば心配ないですね。
ところでこの水を使った作法を、正式には洒水(しゃすい)と申します。
僧侶は先ず頭上から湧き出でる仏性を育んだ水・法性水(ほっしょうすい)を器へ移し、器の中の水全体を法性水に変えます。
一般の参列者はそれぞれこの水を受け、葉を使って祭壇の方へ数度振りかけます。これにて、供養の場を「お清め」しているのです。
皆ひと通り洒水が終わったら器を僧侶へ戻しますが、僧侶は葉を使って水を頭上に戻す動作を行い、器の水を普通の水に戻します。これにて一連の作法は終了です。
なお、日本に於いて水を使う儀式は神道行事の手水や禊などの影響もあると考えられますし、水向け自体は供水(くすい)と言ってシンプルにお供えの水としての性格も併せ持つと言えるでしょう。
燭台
古いロウはなるべく取り除き、1基または1対でご用意ください。
大きいものは火も大きくなるので危険ですから、小さいロウソクを使いましょう。
ロウソク立てに大量のロウが付着している場合には「熱湯をかけて溶かし落とす」という清掃方法もありますが、やけど注意です。
ロウ受けの部分にあらかじめシリコン系の離型剤を塗布したり、アルミホイルで受け皿を作って乗せておくと、垂れて固まったロウの除去が楽になります。
※仏壇中段の引き出し型テーブルの下へ、前机に載せたロウソクの火がちょうど当たる位置に来ることがあります。
過去に炙ってしまい既に焦げているかもしれませんので、一度ご確認いただき、以後の使用時はお気を付けください。
線香
市販品で良いのですが、長すぎたり湿気や経年で脆くなっているものは危ないので避けましょう。
箱に入れたままより、ある程度の量を線香立てに予め入れておくと使いやすいです。
「普段立てる線香の数は何本が良い?」とよく質問を受けますが、1本または3本(写真参考)でお願いいたします。
火を点けて香炉に立てるときは、軸をなるべく深く挿して安定させ、着火している先端を若干香炉の中央寄りに傾けておくと安全です。
前述の燭台の件も含め、掲載写真のように耐火性のシートを敷かれると、なおいっそう安全にお使いいただけます。
生花
お好きな切り花を花瓶に生けて、1基または1対でご用意ください。
使う花の種類は特段指定しません。
例えば故人のお好きな花や季節の花を飾るとか、種類の選定はご自由になさってください。
香炉
お線香を立てる器です。
灰の量は、ある程度ならしたときに半分以上あれば良いです。
中で圧し固まった古い線香の軸はなるべく抜いておきましょう。
灰ならしを終えたら、中の空気を抜くために軽く「トントン」と香炉全体を地面で叩いて仕上げます。
灰がある程度詰まっていると、線香を挿したときに安定します。
最後には、周りに付着した灰を固絞りの雑巾で拭っておきましょう。
★特集第3弾へリンクします!
…最低限これらが整っていれば、お支度は大丈夫かと思います。
細かな内容ばかりでしたが、一通りのご紹介をさせていただきました。
その他、お盆やお彼岸にあたっても基本的なところは同じですので、以上の説明を何度もご確認の上、これからのご供養に是非ともお役立てください。